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2012年7月31日

【新興国に翔ける】駐在員の本当の価値は帰国後にある

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/120731/mcb1207310500002-n1.htm

 以前、この連載で「日本人駐在員を送り込むな」という内容のコラムを書いた。生産拠点としての進出であれば話は別だが、現地市場を求めた進出においては駐在コストが高く、現地市場の勝手がわからない日本人を送り込んでも非効率といった内容だ。

 しかし、現実問題として本社のグローバル化が遅れている日本企業の場合、仮に優秀な現地人材を採用できたとしても、そのマネジメントで結局はつまずくことになる。それならば、当面は駐在員を送り込むというのが多くの日本企業の本音だろう。

 最近では、「ユニクロ」のファーストリテイリングや楽天が英語を社内の公用語とすることを発表して世間を騒がせた。経済は今後もますますボーダーレス化し、ビジネスはさらにグローバル化していく。企業がいつまでも出身国にこだわっていては、世界から取り残されてしまうようになるだろう。その時代への備えとして、社内の公用語をいち早く英語にしたユニクロや楽天はすばらしいと思う。

 一方で、今後は売り上げの大半を海外に求める必要があったとしても、すべての企業がユニクロや楽天のような思い切った経営判断をできるとはかぎらない。その理由はさまざまだ。特に歴史が長く、数千、数万の社員を抱える日本の大企業には難しい判断だろう。

 そういった大企業は、既に送り込んでいる日本人駐在員の帰国後の価値をもっと理解しなければならない。大手企業の多くは、帰国した駐在員を骨抜きにしているように感じる。

 私は職業柄、多くの駐在員と話をする機会がある。親しくなれば、プライベートな相談も受ける。その中で、圧倒的に多いのが、帰国後に関することだ。長く海外に駐在してしまったがために、帰国しても本社にポストがないというのだ。であれば、成長著しいアジア現地企業の打診を受け入れて、現地にとどまる方がいいのだろうかといった内容だ。中には、自分の現地でのキャリアを生かし、現地で起業する人までいる。日本の本社に戻っても、その能力は評価されず、生かせないというのだ。

 実際に帰国した人とお会いすると、駐在員時代の活気に満ちた目が消えているケースが多い。帰国後は海外と関係のない仕事をしているという。

 さらに驚くのは、現地採用された日本人の扱いだ。現地採用とは、現地の大学などを卒業し、現地で就職をした日本人や現地で転職をした日本人を指す。多くの日本企業では、現地採用組が本社で仕事することなどほとんどない。そこに明確な理由などはない。だた現地採用だからである。実にもったいない現実だ。

 彼らは、確かに現地人材と比較すれば、現地市場を獲得するという能力では劣る。しかし、数年の駐在経験で、「現地市場がどういう市場か」「その市場を取るために、本社と現地法人がどう変わらなければならないのか」について、身をもって学んだ人材である。帰国後、本社をグローバル化できる貴重な人材なのだ。現地は現地人に任せ、その現地を本社からマネジメントできる適材なのだ。

 日本企業は今一度、帰国後の駐在員の重要性を見直すべきだと強く感じる。

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【執筆者紹介】

 森辺一樹(もりべ かずき)

 2002年、ストラテジック・デシジョン・イニシアティブ(SDI)を創業。現会長。1000社を超える企業に対して新興国展開支援の実績を持つ。海外市場開拓コンサルタントの第一人者として活躍中。