TOPレポート・コラム> レポート・コラム詳細

セミナー・講演会詳細

2011年4月5日

【新興国に翔ける】震災後の訪日観光と食の輸出に危機

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/110405/mcb1104050501004-n1.htm

 2万7000人を超す死者・行方不明者を出した東日本大震災。現在、17都県で16万人以上が避難者となっている。被害の実態が明らかになるにつれ、この大震災が日本経済に与える影響が甚大であることは言うまでもない。日本政府は、地震と津波で損壊した道路や住宅などの被害額について、最大で約25兆円に上るとの試算をまとめた。

 復興に向けて少しずつ歩みだしたが、現実問題として道のりは非常に険しいだろう。

 まず、訪日観光客の受け入れ事業は壊滅的といっても過言ではない。

 人口減少と少子高齢化による内需縮小、地方の過疎化が進む日本にとって、訪日観光客の受け入れは国家成長戦略の重要な柱のひとつであった。日本政府は2016年に2000万人の外国人観光客の誘致を目標に掲げ、その約3割を中国人と位置付けていた。しかし、これは確実に達成されないだろう。

 阪神淡路大震災の例から判断しても、少なくとも5年以上は計画がずれ込んでしまうことが避けられない。その最大の要因は、東京電力福島第1原子力発電所の損傷による放射能漏れがいまだ予断を許さない状況にあることだ。たとえ原発問題が終息しても、世界に与えた日本の放射能漏れというイメージが観光に影響を及ぼさなくなるまでには、10年程度は要するだろう。

 在日本中国人の帰国ラッシュや塩の買い占め騒動などを見ても分かる通り、観光目標の3割に当たる600万人の中国人への期待は特に薄い。塩の買い占め問題は「海が放射能で汚染され、塩の安全性に問題が出る」や「ヨウ素を含む塩には放射能汚染を防ぐ力がある」との情報が飛び交って混乱を招いた。

 だが、そもそも福島第1原発の場所は太平洋側であり、日本海側ではない。これは中国人に限らず、外国人にとって、「日本はひとつ」であることを意味する。日本の地理関係を深く理解している外国人は少ないのである。

 東日本大震災で大きな影響が生じたのは東北と関東であり、北海道や大阪から西の地域は直接的な関係はないはずだが、それら地域もしばくはこの問題に悩まされるだろう。

 また、日本の安心・安全イメージが高い生鮮食品や加工食品などに関しても、アジアの富裕層を中心に輸出が伸びていたが、こちらは観光産業以上に深刻だ。工業製品ですら災害エリア以外であっても外国企業から輸出前の放射能測定を依頼される企業が増えるなか、口に入れる食品などを日本から輸入するという国は当面ない。食の安心・安全イメージは、原発事故によって音をたてて崩れてしまったのだ。

 いま日本がやるべきことは、一日も早い原発問題の終息と、今回のおもな災害エリアは東北地域であり、食物のみならず日本製品の安全・安心イメージを海外に向けて発信することである。被災地以外の経済の打撃を最小限に抑えることが、日本全体で東北地域を支えることにつながる。一日も早い対応が望まれる。

                   ◇

【会社概要】ストラテジテック・デシジョン・イニシアティブ(SDI)

中国インド東南アジアを中心とした新興国市場のリサーチとマーケティングに特化している。

ホームページはhttp://www.sdigrp.com/