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2011年8月2日

【新興国に翔ける】鉄道事故から見える今後の政治的影響

http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/110802/cpd1108020503003-n1.htm

 中国浙江省温州市で7月23日夜に起こった高速鉄道事故を受けて、今、中国が大きく揺れている。事故発生からの救助活動のやり方や事故原因の追及などさまざまな面で政府の対応に国民の不信感が増している。また、報道統制やネット規制の徹底が遅れたのは、近年の中国を見ていても珍しい現象だ。今回は、この事故から見える中国の今後についてお話をしたい。

 救助作業後に生存者が救助されるなど、あまりにも早過ぎる救助作業の打ち切り。隠蔽(いんぺい)とも思える事故車両の粉砕、土中埋め。さらには、批判を受けて掘り起こす始末。また、事故原因が二転三転する中での、早過ぎる運行再開など、今回の事故では、理解に苦しむことが多い。

 この様子をみて、国際社会は中国を批判し、多くの人が、中国はやはりむちゃくちゃな国だとの印象をさらに強めただろう。

 しかし、中国国民は決してむちゃくちゃではなく、彼らは犠牲者であることを理解しなければならない。今回の事故対応の背景には、共産党内の派閥争いの影響が出ているのである。

 先月、江沢民元国家主席の死去報道が世間を騒がせたが、中国鉄道省は、江沢民の上海閥の影響力が強い。

 対して、胡錦濤国家主席は上海閥とは対立関係にある共青団である。

 そして、次期国家主席候補の習近平は上海閥を後ろ盾に持つ太子党だ。

 一党独裁といえども、その内実は派閥間の争いが強く存在する。一連の事故対応のごたごたや、政府批判報道、インターネット上の言論統制が徹底されなかったことにも、こういった政治的背景が潜んでいるのだ。

 鉄道省は金と権力が最も渦巻く国家行政機関の一つだ。中国高速鉄道は国の威信をかけた一大プロジェクトであり、問題が起これば鉄道省トップの首が飛び、派閥の力は弱まる。事態を隠蔽し、早期復旧したがった背景にはこういったことがあるのだ。

 また、中国メディアの“らしくない報道”に関しては、中国メディアが変わりはじめたなどの甘い考えは捨てるべきだろう。

 確かに、メディアの現場では中国の報道のあり方に疑問を持つ向きも多いだろう。しかし、中国メディアは、共産党中央宣伝部の影響力が強く、党がメディアトップの人事権を握っている以上、報道の完全なる自由は存在しない。党内の派閥争いが強まれば、より強い派閥の影響力を受けた報道が成されて当然である。

 インターネット上の言論統制が徹底されなかったのも、こういった背景が強く影響している。

 中国は、今、著しい経済成長とともに、従来の中国から新たな中国に生まれ変わろうとしている。着実に国際社会が向かうべき方向に向かっているのは間違いない。

 しかし、その過程では、さまざまな政治的問題が、国民や経済に影響を及ぼしている。中国ビジネスを展開する上では、これら政治的影響もしっかりと見極めながらの経営判断が必要とされることは言うまでもない。

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中国インド東南アジアを中心とした新興国市場のリサーチとマーケティングに特化している。

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