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2011年5月17日

【新興国に翔ける】進出先の選定理由は明確に

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/110517/mcb1105170504017-n1.htm

 海外進出というと多くの企業が中国を選ぶ。なかでも圧倒的なのが、上海だ。「なぜ、進出先に中国を選んだのか?」「なぜ、上海を選んだのか?」

 そう尋ねて明確な回答が返ってくることはまれである。

 中国を選んだ理由の多くは、著しい経済成長や13億人を超える人口を挙げる。そして、中国で最も繁栄している都市は上海で、富裕層も多いから、中国といえば上海だ。そのほかの進出先の選定理由は、いささか不明確に聞こえる。

 確かに、中国は近年10%程度の経済成長を維持し、総人口も約13億4000万人に達している。上海の常住人口は、2300万人を超えて、東京都の1300万人を大きく上回る。しかし、この2300万人のなかで、実際にビジネスのターゲットとなる顧客層がどれくらいいるのか、また、どこにいるのかを理解している企業は少ない。

 13億の総人口に関しても、人口が中国を進出先に選んだ理由だとするならば、その巨大な市場全体を中長期でどうとらえるのかが重要だ。中国に進出していながら一部の地域や顧客層だけを狙うのでは13億の総人口など進出理由には何の関係もない。

 一方で、アジアに目を向けたとき、私はシンガポールという国にとても注目している。2010年度、シンガポールは14%以上の経済成長を達成した。中国をはるかに超えた近代国家であるにも関わらず、この経済成長率は驚異的だ。人口は、10年に500万人を突破し、1990年比で1.6倍も増加している。また注目すべきは、シンガポールの1人当たり国内総生産(GDP)が約5万5000ドル(約445万円)で09年にはすでに日本を超えていることである。この数字は、中国の1万ドルの5倍以上にもあたるのだ。

 言い換えれば、シンガポールには、500万人の豊かな国民がごく限られたエリアに集中している。中国のように広大なエリアに点在し、それを見分けることもままならない市場よりも、はるかに攻めやすい。

 また、金融インフラもしっかりと整備されている。税金に関しても法人税が17%と中国やその他の国と比較してもメリットが断然に高い。

 では、ビジネスの拡大可能性はどうだろうか?

 しょせん、500万人強の人口だとビジネスの広がりは限定的になるのではないかと想像しがちだ。しかし、シンガポールは、東南アジアのなかで最も近代的な都市として、マレーシア、インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナムなどの東南アジア諸国連合(ASEAN)の富裕層や中間層に対し、流行発信基地として強い影響力を持つ。この地で成功を収めれば、ASEAN全体での成功の足がかりになるのだ。中国も「省が違えば国が違う」といっても過言ではないほど、国民性や地域性があり、都市間の距離もあるのだから、シンガポールを拠点にASEANを狙うのと何ら変わらない。

 日本企業はアジアを攻める際、進出する国を選んだ理由をより明確にしなければならないと感じる。この最初の一歩が不明確な企業には、その国での成功はあり得ない。

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【会社概要】ストラテジテック・デシジョン・イニシアティブ(SDI)

中国インド東南アジアを中心とした新興国市場のリサーチとマーケティングに特化している。

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