TOPレポート・コラム> レポート・コラム詳細

セミナー・講演会詳細

2011年9月13日

【新興国に翔ける】海外M&A 「金」を出したら「口」を出せ

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/110913/mcb1109130503014-n1.htm

 現在、1米ドルは70円台後半を推移している。数年前を考えれば、昨今の円高にはすさまじいものがある。輸出型ビジネスにとっては大きな痛手だが、逆にM&A(企業の合弁・買収)を考えれば大きなメリットがあるのは言うまでもない。時価総額100億円の会社が76億円程度で買えるのだから、これほど絶好の機会はない。

 もちろん、今年に入り日本企業のクロスボーダーM&A(国境を越えたM&A)は増加しており、総額で既に昨年度の実績を超えている。

 確かに、M&Aは成長著しいアジア市場で成功を納めるためには、一つの効果的な選択肢である。業界によっては、日系企業が独資でゼロから立ち上げていたら、既に市場に存在する外資や内資企業には到底勝てないケースは多々ある。日本と異なる市場が、日本と異なるスピードで成長しているだけに、勝つためのM&Aは効果的だ。しかし、日系企業の場合、M&Aをしても、その市場で大きな成果が出ないケースが少なくない。

 合弁や買収そのものは、しっかりとした競争環境分析に基づいた戦略があれば、その必要性の判断はつく。後はデューデリジェンス(投資対象の適格性を把握するために行う調査活動)を着実に行えば、M&Aは物理的に実施可能となる。言うならば、ここまでは誰だってできることなのだ。

 M&Aで最も重要なのは、合弁や買収後の統合や融合のプロセスにある。このプロセスを経て、現地での戦略が初めて実行へと移せる。しかし、日本企業の場合、このクロスボーダーM&A後に難しさを感じている企業が少なくない。

 そもそもM&Aは、M&A後のさらなる成長を実現するために行うものでなくてはならない。しかし、M&Aをした事実だけが表に出て、なかなか成果に結びつかないのだ。

 その理由として、日本企業の戦略があまりにもM&Aありきであることが挙げられる。自分たちには良く分からない難しい外国の市場であるため、現地の良きパートナーとのM&Aを通じて、彼らに任せるのが一番良いとの考えから、M&Aを実施した後が続かないのだ。言ってしまえば、“金”は出すが“口”は出さない。正しくは、“口”が出せないのだ。M&Aをした後の戦略が皆無であるだけでなく、相手先企業のマネジメントを行うグローバル人材もいないのだ。結果として、お金は出せるが、口が出せない始末になる。

 クロスボーダーM&Aは、日本企業が海外で成功するための選択肢の一つとしては非常に正しい。しかし、例えM&Aをしても、相手現地企業が全てを完璧にこなしてくれることはない。M&Aをして終わりではなく、M&Aをして始まるのだ。

 これからの日本企業は、M&Aを成果あるものにするために、グローバル人材の育成とM&A後の戦略をしっかりと持たなくてはならない。“金”を出して終わりではなく、“金”を出したのなら、“口”を出せるだけの人材と戦略が必須なのである。

                   ◇

【会社概要】ストラテジテック・デシジョン・イニシアティブ(SDI)

中国インド東南アジアを中心とした新興国市場のリサーチとマーケティングに特化している。

ホームページはhttp://www.sdigrp.com/