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2011年7月26日

【新興国に翔ける】機能、品質や技能では戦えない

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/110726/mcb1107260503006-n1.htm

 誤解を恐れず言うが、日本企業はもうそろそろ機能や品質、そして技術にしがみつくのをやめなければならない。そんなものを振りかざしても、勝てる世界はとうの昔に過ぎ去っている現実を直視すべきだ。

 世界はパラダイムシフト(その時代や分野において当然のことと考えられていた認識や思想、価値観などが劇的に変化すること)を迎えた。アナログの時代、カセットテープが中心だった市場では、それを聞くための携帯デッキとしてソニー製ヘッドホンステレオ「ウォークマン」が市場を席巻した。その後、デジタル化の時代を迎え、CDやMDが登場し、この時代も引き続きウォークマンが市場をリードした。

 しかし、時代は今、ICT(情報通信技術)が主となり、MP3が市場の主役に躍り出た。途端にウォークマンは王者の座から引きずりおろされた。その座を奪ったのが米アップル製携帯音楽プレーヤー「ipod(アイポッド)」だ。ipod程度の技術や品質の製品を日本企業が作れないわけがないにも関わらず、なぜ市場ではipodが取って代わったのか。

 アナログやデジタルの時代、最も重要視されたのは技術であり、機能であり、品質であった。値段が少し高くても、より技術力が高いものを、より機能が多いものを、より品質が良いものを、市場は好んだ。最大のマーケットであった欧米日の先進国市場は、日本企業の高い技術力と品質を大いに歓迎した。

 ところがICTの時代は、それ以上に重要視されるものが出現した。機能や品質、技術が主役の時代から、ソフトウエアやユーザーエクスペリエンス(消費者体験)が主役の時代に突入したのだ。これがまさにパラダイムシフトであり、ipodは時代の変化に適切に対応した製品である。これは決して携帯音楽プレーヤーの分野だけの出来事ではない。今、さまざまな産業分野で同じことが起こっている。

 時を同じくして、消費市場も先進国から新興国へとシフトした。ここでも日本企業は機能と品質、そして技術を振りかざしたがために、マーケット争いに出遅れてしまった。そして、この期に及んでまだ技術が重要だと信じている企業は少なくない。まるで新興国はまだまだデジタルの時代なので、技術が重要だと言わんばかりである。

 しかし、ICTは瞬時に国境を越える。先進国で起こったパラダイムシフトは、新興国でも時差がなく起きている。そして新興国は、ソフトウエアやユーザーエクスペリエンスだけではなく、チャネル(経路)やプライス(価格)、ブランドといった販売面での戦略もしっかりと組み立てなければ勝てない。これらは全て、技術以上に重要視される。

 戦後の日本を支えたのは確かに技術力であった。しかし、もう技術が主となる時代は終わったのだ。仮に技術が必要とされるとすれば、それは中国の高速鉄道事故や粉ミルク事件でも分かる通り、「安心」や「安全」のための技術のみである。日本企業が次の強みを見いだすためには、まず、技術にしがみつくのをやめなければならないと強く感じる。

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【会社概要】ストラテジテック・デシジョン・イニシアティブ(SDI)

中国インド東南アジアを中心とした新興国市場のリサーチとマーケティングに特化している。

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