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2012年3月6日

【新興国に翔ける】日産の50万円車販売が意味するもの

http://www.sankeibiz.jp/business/news/120306/bsa1203060500000-n1.htm

 先週、新聞各社は、日産自動車が新興国市場向けの戦略車として、車両価格を50万円に抑えた車を販売すると報じた。ブランド名は「ダットサン」で、日産が昭和40年代頃まで使用していたブランドだ。

 まず、この日産の戦略を高く評価したい。新興国市場では、今後もまだまだ中間層が拡大し、自動車に対する需要はさらに大きく伸びる。しかし、中間層の多くが買える自動車の価格帯は、日本の3分の1以下である。インドのタタ自動車の25万円車を筆頭に、韓国、中国、そして欧米勢も中間層向けに低価格車を投入している。

 新興国の中間層にとっての車とは、われわれ先進国とは異なる。車の最大の価値は移動手段の道具ということであり、快適性や見た目、走行性などは二の次で、まずは価格なのだ。

 日産の50万円車の投入で、日本の自動車メーカーもいよいよ新興国市場で中間層と本気で向き合う覚悟をしたように感じる。これは、日本の自動車業界にとって大きな一歩であるし、日本企業にとって新興国市場における新たなステージへの突入をも意味する。

 一方で、この事実に最も危機感を持たなければならないのは、材料や部品の日系生産材メーカーである。海外に進出している日本企業の大半は生産材メーカーであり、その多くは日産のような消費財メーカーが海外進出をした際に、海外でも日本と同様に取引をするために進出をしてきた。

 それゆえに、海外での顧客のほとんどが日系企業であるという生産材メーカーは少なくない。しかし、50万円の車を作るのに、今までと同様、日本の部品メーカーの優れた部品を必要とするだろうか。日本の技術力ある材料加工メーカーを必要とするだろうか。答えは「ノー」である。

 日産は、なぜ新興国で50万円の車を販売することに踏み切ったのか。もしくは、踏み切らざるを得なかったのか。日本の自動車メーカーは、今、正に新興国を中心としたグローバル競争の真っただ中にいるのだ。グローバル競争が激化すればするほど、部材を中心としたサプライチェーン(供給網)そのものが大きく変わり、今までのように、日系企業が日系の部品を買うとは限らない。部材調達もさらにグローバル化することになる。

 これは決して自動車業界に限ったことではない。本年度、巨額の赤字を計上した家電業界でも同様だ。日本の家電メーカー各社は、新興国で韓国のサムスンやLG電子に市場を奪われ、そろそろ本気で新興国の中間層と向き合う時期に来ている。

 そうなれば、日系が日系から買う部材調達の仕組みも大きく変わる。自動車の次は、家電、食品、医薬と他業界でもグローバル競争はさらに進む。

 日本の生産材メーカーは、この現実を直視し、日系消費財メーカーに頼った海外展開ではなく、自社でグローバル市場をどう獲得するかを本気で考えるときが来ているように思う。

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【会社概要】ストラテジテック・デシジョン・イニシアティブ(SDI)

中国インド東南アジアを中心とした新興国市場のリサーチとマーケティングに特化している。

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