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2012年5月8日

【新興国に翔ける】今のアジアに日本の高度成長期重ねるな

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/120508/mcb1205080503005-n1.htm

 最近でこそ少なくなったが、消費財メーカーの関係者と話をすると、今のアジアの経済成長を、日本の高度成長期と重ねる人がしばしばいる。この考え方は、アジア市場獲得を目的とした戦略を構築する際に非常に危険だ。

 かつて、日本の高度成長期には、三種の神器といわれ、テレビや冷蔵庫、洗濯機などの家電製品を消費者がこぞって求めた。メーカーは皆、工場をフル稼働させ、大量生産で市場の要望に応えていった。

 今のアジアでも同じようなことが起こっている。人々の生活が急激に豊かになり、中間層がどんどん増えている。アジアには現在、約9億人の中間層が存在する。それは今後もさらに拡大し、テレビや冷蔵庫、洗濯機を求めていくだろう。

 しかし、日本の高度成長期と大きく異なるのは、テレビや冷蔵庫、洗濯機は、既に限られたメーカーしか製造できない新しい技術ではないということと、アジアは日本のような1億総中流・総同種の特殊市場ではないということだ。

 日本の高度成長期、テレビや冷蔵庫、洗濯機などは、新しい技術を生み出す限られたメーカーのみが製造できた製品で、人々のライフスタイル(生活様式)そのものを変えようとした。この時代は、ライフスタイルの大きな変化と向上を望む消費者の要望に応えられる家電を生産できるメーカーが限られていた。このため、プロダクトアウト(市場ニーズを意識せず、企業側の意向や技術を重視して製品やサービスを開発して市場に投入する考え方)で十分に市場で通用した。

 しかし、今のアジア市場において、テレビや冷蔵庫、洗濯機は、人々のライフスタイルを大きく向上させるための道具には変わりがないが、もはや新しい技術ではない。それらを製造できるメーカーは、韓国と中国をはじめ数多く存在する。

 また、同一国といえども、日本のように同じ生活スタイルやレベル、文化や言語を共有している市場ではない。このような市場では、現地ニーズに合わせたマーケットイン(企業が製品や商品、サービスの開発や販売に際して、市場ニーズを取り込んでいく考え方)が必要となる。

 それを無視してプロダクトアウトに頼ろうとすると、より品質の高いテレビ、より機能性の高い冷蔵庫と品質や技術力で勝負しようとしてしまい、それが価格に影響を及ぼす。そして結局は、アジア市場にそぐわない製品投入で市場から淘汰(とうた)されてしまうのだ。アジアの消費者は高すぎる品質も高すぎる技術も求めていない。日本の消費財メーカーのアジアでの敗因の多くはここにある。

 昨今のアジアの経済成長は、決して日本の経済成長期と重ねてはならない。市場環境と競争環境、そして消費者特性がかつての日本とは異なることをしっかりと認識しなければならないのだ。

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【会社概要】ストラテジテック・デシジョン・イニシアティブ(SDI)

中国インド東南アジアを中心とした新興国市場のリサーチとマーケティングに特化している。

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