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2010年11月9日

【新興国に翔ける】中国人観光客への3つの誤解

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/101109/mcb1011090504019-n1.htm

 訪日外国人観光客の受け入れは日本の国家成長戦略の重要な柱の一つだ。現在、成長著しいアジアに存在する約8.8億人の中間層のうち、約半数は中国人である。中国人観光客のニーズを的確にとらえることが、受け入れ側にとって最も重要だ。日本政府は2016年に2000万人の外国人観光客の誘致を目標に掲げ、その約3割を中国人と位置付けている。

 しかし、多くの企業や自治体が日本に来る中国人観光客のニーズをうまくとらえられていない。理由の1つ目が、台湾・香港人と中国人を一緒にしていることだ。台湾人や香港人は、7?8割が観光目的で訪日している。一方で、中国人の場合、まだ全体の半分弱はビジネス目的である。台湾・香港人は訪日のリピート率も高く、中国人のリピート率はまだ15%に満たない。つまり中国人は、台湾・香港人よりも日本に関する情報量が少なく、訪日で求めているニーズが異なるのだ。それを理解したうえでの施策でないと中国人観光客誘致にはつながらない。

 2つ目は、個人観光ビザ(FIT)の発行要件の緩和により、個人旅行が劇的に伸びるという誤解だ。そんなことは簡単にはありえない。航空便の数に問題があるからだ。日本と中国の航空協議はここ数年、平行線をたどっている。昨今の日中間の微妙な関係を考えれば、しばらくはこの状況が続くだろう。

 仮に航空協議が進み、増便となったとしても、中国人の個人旅行が劇的に伸びるのには時間を要する。先にも述べたように、中国人はまだまだ日本に関する多くの情報を持ち合わせていない。案内人なしで旅行を楽しめるレベルには至っていないのだ。

 日本も高度経済成長期にそうだったように、米ハワイへは団体で行った。個人でハワイに行くまでになるには時間を要したはずだ。訪日観光のリピート率が上がらなければ個人旅行の数は伸びない。今後も伸びるのは絶対的に団体旅行であり、団体旅行中の自由時間が延びるはずだ。受け入れ側は、個人旅行者向けの施策ではなく、団体旅行の自由時間に向けた施策に備える必要がある。

 3つ目は、中国人観光客の消費の決定は、訪日後ではなく、訪日前であるということだ。われわれSDIの調査でも、特にビデオカメラや宝飾品、ブランド品などの高額商品は、約8割の人が購入決定を訪日前に行っている。日用品や医薬品など、比較的安価な商品であっても、約5割の人が訪日前に購入するものを決定する。また訪問先は、完全に訪日前に決定している。観光地や観光施設は、訪日前の中国人に対して施策が打てなければ、中国人観光客を呼び込むことはできない。

 日本の長期的な人口推移を考えれば、中国人観光客を相手にしたビジネスは短期的なものではなく、10年、20年と長期的に継続していくだろう。今後、企業や自治体は中国人観光客のニーズと消費行動を的確に理解し、施策につなげることが求められる。

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【会社概要】ストラテジテック・デシジョン・イニシアティブ(SDI)

 中国インド東南アジアを中心とした新興国市場のリサーチとマーケティングに特化している。

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