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2012年7月17日

【新興国に翔ける】ベンチャー企業は今こそ北米狙え

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/120717/mcb1207170501007-n1.htm

 前回(7月3日付)は「今、本当にアジア市場なのか?」をテーマに取り上げた。増加するアジア15億人の中間層で大きなシェアを狙うために大企業がいち早く進出するのであれば、今まさにアジア市場だが、中堅中小・ベンチャー企業は必ずしも今、アジア市場ではなく、北米市場にもっと目を向けるべきだと締めくくった。今回はその理由を述べる。

 まず指摘しておきたいのが、昨今、あまりにも多くの企業が「アジア、アジア」と次の市場はアジア以外にはあり得ないと間違った思い込みをしている感が否めないことだ。北米や先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)の国々を市場候補として比較検討すらせずに、ただ単にメディア報道や大企業のアジアシフトだけを見て、自分たちもアジア市場だと思い込んでいるのであろう。長年、私が新興国市場のリサーチとマーケティングをやっていて言えるのは、アジアはそう簡単には稼がせてくれないということだ。

 確かにアジアはこれからの最有力市場であることは間違いない。しかし、冷静に考えれば、中堅中小・ベンチャー企業にとって、拡大する15億人の中間層はそう大きな魅力ではない。アジアの中間層を獲得するということは、日本並みに成長するまで中長期で投資をするか、現状にこちらが合わせるか、そのはざまで世界中の競合と戦っていくことを意味する。経営資源が乏しい中堅中小・ベンチャーには相当な重荷となる。

 また、そもそも15億人もの巨大な市場など本当は必要がないはずである。中堅中小企業が求めているのは中長期の投資をして得る大きなシェアではなく、今後落ち込む内需の代替え市場をできる限り短期で得ることだ。

 最たる過ちは富裕層を狙いアジアへ進出することだ。アジアは当然ながら富裕層も先進国の数倍のスピードで拡大している。

 しかし、2010年の時点で1世帯当たり年間可処分所得が3万5000ドル(約277万円)以上の富裕層は、G7で5億4000万人。対して、アジアは1億人である。20年の予測でも3億5000万人とG7には届かない。なのに、なぜアジアの富裕層を狙うのか。

 先進国の富裕層を取り込んだ上で、アジアの富裕層をというなら話は別だが、多くの企業はそうではない。

 さらに言えば、アジアで富裕層に分類される人たちはかつての日本がそうだったように、欧米ブランドに強いあこがれを抱いている。残念ながら、今の日本には1980年代に誇った存在感やブランド力はない。

 これからの時代、海外に目を向けることは重要だ。しかし、北米を中心としたG7などの先進国を見ずして、アジア市場しかないという思い込みは正さなくてはならない。G7の中でも特に米国は、依然として圧倒的な超大国である。国内総生産(GDP)は15兆ドルと、2位の中国や3位の日本の倍以上だ。米国は1人当たりGDPで見ても上である。人口に関しても、現在の2億8000万人から50年には4億2000万人へと増加が予測されている。

 もちろん、GDPや人口だけですべては語れないが、決してあらゆる企業にアジアが合っているとはかぎらない。自社に本当に適した市場がどこなのか。今一度、冷静に見つめ直してほしい。

                   ◇

【執筆者紹介】

 森辺一樹(もりべ かずき)

 2002年、ストラテジック・デシジョン・イニシアティブ(SDI)を創業。現会長。1000社を超える企業に対して新興国展開支援の実績を持つ。海外市場開拓コンサルタントの第一人者として活躍中。