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2012年9月11日

【新興国に翔ける】シャープから学ぶ 技術力では勝てない時代

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/120911/mcb1209110504014-n1.htm

 液晶テレビで一世を風靡(ふうび)したシャープ。ブランド名「AQUOS(アクオス)」は、日本人なら誰もが知っている最高品質の液晶テレビの象徴だ。そのシャープが今、台湾・鴻海(ホンハイ)との提携に翻弄され、かつてない危機に瀕(ひん)している。

 ディスプレイバンクによると、2011年の薄型テレビ(液晶・プラズマ)の世界シェアは、1位がサムスンで20%。2位はLGで13%。これら韓国勢2社で市場の33%を占めている。

 対して、日本勢はというと、3位のソニーが9%、4位のパナソニックと5位の東芝がそれぞれ7%。6位に6%のシャープが付けている。

 日本勢6社でもサムスン、LG2社のシェアには届かない。そして、下位にはTCL、ハイセンス(HISENSE)、スカイワース(SKYWORTH)、チャンホン(CHANGHONG)、コンカ(KONKA)、ハイアール(HAIER)といった中国勢が迫っている。

 最近ではシャープばかりに目がいってしまうが、これは決してシャープだけの話ではない。液晶テレビなど、いわゆる「黒物家電」では、日本勢は韓国に突き放され、中国に追い上げられるといった板挟みの状態だ。

 洗濯機や冷蔵庫といった「白物家電」でも、世界シェア1位のハイアールを中心とした中国勢にシェアを奪われている。

 この現象は、日本がかつて米国メーカーからブラウン管テレビの市場を奪い取った1980年代に似ている。世界で初めてブラウン管テレビを商品化した米国のRCAやGEのテレビは今や市場から姿を消した。

 高い技術を持ちながらも、その地位を奪われつつある日本勢。その敗因は、内需縮小と円高とウォン安が韓国勢を有利にしたとされている。しかし、本当にそうなのだろうか?

 黒物と白物のいずれにしても家電は既にコモディティ化(機能や品質の均等化)されており、極端な話、製造設備さえ整えれば誰でも作れる時代になっているのだ。にもかかわらず、日本の家電メーカーはかつて米国からその座を奪った際の最大の武器であった「技術力」や「高品質」をいまだに最大で唯一の武器としていることに、低迷の要因があるのではないだろうか。発明から半世紀が過ぎ、既にコモディティ化してしまった製品は、技術や品質では勝てないことを直視すべきだ。

 米国は、日本企業にテレビ市場を譲り渡した代わりに、ソフトウエアやインターネットを創出した。それに関連して、マイクロソフトが生まれ、グーグルやヤフーが誕生し、アップルというオンリーワン企業が出てきたのである。

 新しいものが生めないなら、「技術」や「品質」にすがっても、それを理解してくれるのは日本市場だけだろう。しかし、その日本市場も少子高齢化と人口減少でますます縮小していく。世界はコモディティ化した製品に技術や品質は求めていない。新しいものが生めないのであれば、技術神話から目を覚まし、徹底して市場ニーズを追求するほかない。      

             ◇

【執筆者紹介】

 森辺一樹(もりべ かずき)

 2002年、ストラテジック・デシジョン・イニシアティブ(SDI)を創業。現会長。1000社を超える企業に対して新興国展開支援の実績を持つ。海外市場開拓コンサルタントの第一人者として活躍中。