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2012年11月6日

【新興国に翔ける】アジア市場にこだわる必要はない

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/121106/mcb1211060503010-n1.htm

 今から6、7年前、私が大企業から受ける相談の多くは中国一辺倒であった。その中心は「生産拠点として十分に機能を果たした。その機能を生かし、いかにして中国市場を獲得するか」というものだ。

 それから数年がたつと、インド東南アジアも含めたアジア市場全体へと大企業の相談内容も変化していった。

 そして昨今、大企業のアジア展開がほぼ一巡し、中堅中小企業からの相談が数を増している。その多くは、北米など先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)の国々を市場候補として比較検討すらせずに、ただ単にメディア報道や大企業のアジアシフトだけを見て、自分たちもアジア市場だと思い込んでいるのである。

 確かに、アジアはこれからの有力市場であることは間違いない。しかし、冷静に考えれば、中堅中小企業にとって、拡大するアジアの15億人の中間層はそう大きな魅力ではない。アジアの中間層を獲得するということは、日本並みに成長するまで中長期で投資をするか、現状にこちらが合わせるか、そのはざまで世界中の競合と戦っていくことを意味する。経営資源が乏しい中堅中小企業には相当な重荷となる。

 また、そもそも15億人もの巨大な市場など本当は必要がないはずである。中堅中小企業が求めているのは中長期の投資をして大きなシェアを得ることではなく、今後落ち込む内需の代替市場をできる限り短期で得ることだ。

 今のアジア市場は、従来手法を変えなければ食い込めないし、何かを変えるには経営資源や戦略が必要になる。大きなシェアのための変革は投資に見合うリターン(利益)があるが、代替市場のための変革はリスク以外の何ものでもない。

 これからの時代、海外に目を向けることは重要だ。しかし、北米を中心としたG7などの先進国を見ずして、アジア市場しかないという思い込みは正さなくてはならない。

 G7の中でも特に米国は、依然として圧倒的な超大国である。国内総生産(GDP)は15兆ドル(約1207兆円)と、2位の中国や3位の日本の倍以上だ。米国は1人当たりGDPで見ても上である。人口に関しても、現在の2億8000万人から50年には4億2000万人へと増加が予測されている。

 もちろん、米国の経済もまだまだ先行きは不透明だ。そして、米国にも多くの低所得者が存在する。しかし、景気が低迷している米国の低所得者が1ドルを支払う際の抵抗感と、景気が上昇しているアジアの中間層が1ドルを支払う際の抵抗感は、どちらが大きいだろうか。

 大企業のようなスケール(規模)でのビジネスが必要のない中堅中小企業にとって、この“抵抗感”は非常に大きな意味を持つ。大きな市場、成長している市場ではなく、可能な限り抵抗感が少ない市場を狙うことが重要だ。

 自社に本当に適した市場がどこなのか。今一度、冷静に見つめ直してほしい。

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【執筆者紹介】

 森辺一樹(もりべ かずき)

 2002年、ストラテジック・デシジョン・イニシアティブ(SDI)を創業。現会長。1000社を超える企業に対して新興国展開支援の実績を持つ。海外市場開拓コンサルタントの第一人者として活躍中。