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2011年3月29日

【新興国に翔ける】アジアで通用しない日本の「取引カード」

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/110329/mcb1103290501009-n1.htm

 日本では新規に企業と取引をする際に、支払い側すなわち顧客側から販売側に対して、「取引カード」や「取引登録表」という書類への記載を依頼するケースが多々ある。

 その内容は、会社名や代表者名、所在地、連絡先など一般的な情報に加え、資本金や従業員数、さらには「過去3年分の売り上げと経常利益」「主要販売・仕入れ先とその構成比」など、機密性が非常に高い情報までが求められる。なかには、数期分の決算書の提出を平気で請求する企業もある。この情報を基に、社内規定と照らし合わせて取引をするに値する企業か否かを判断することが目的だ。

 未上場企業の場合、会社法上でも情報開示が義務づけられていないにも関わらず、日本では取引カードの提出が平然と行われている。

 この商習慣は、海外ではあり得ない。経営管理上、企業概要の提出を求め、それを情報システムに登録することはあるが、売り上げや利益、主要取引先やその構成比、また決算書の提出までを海外企業に求めれば、「なに様だ!」ということになる。これらの情報開示は相手に自社の台所事情を全てさらけ出すことを意味し、それは取引上も非常に不利になるからだ。

 この商習慣が日本ではまかり通るということは、どこも口にはしないが、「お客様は神様だ」と言っているに等しい。日本では企業間取引であっても、購入側が絶対的に強者で、販売側は弱者なのだ。しかし、海外では基本的に取引は販売側も購入する側も対等であり、それら商談内容の取り決めを約束するものが契約書なのである。

 取引カードの商習慣は、日本独特のビジネス感覚を生み出し、さまざまな面で日本企業のアジア展開の弊害になっていると感じる。なにごとも慎重に進めるという点は確かにすばらしい。同じ感覚を持つ日本企業同士であれば、取引もうまく回っていく。

 しかし海外、特に経済成長が著しいアジア市場においては弊害も多い。たとえば、これらのビジネス感覚を持つ日本企業の場合、新規取引先との取引には慎重になり時間がかかりすぎる。また、歴史の浅いベンチャー企業とは取引に至らないケースが多々ある。

 アジア市場は経済が急激に成長しており、新規参入企業など山ほど存在する。また、成長著しいアジアの経営者の多くは、成長の波を逃すものかと判断が早い。国によっては、20歳代の大半が、大企業への就職よりも、「いつかは起業したい」との夢を持つ。新興国市場ではリスクを取らなければ大きな果実は得られない。

 この点では、日本企業独特の商習慣にともなうビジネススピードの違いにいらだちを隠せない海外企業も少なくない。これからの外需獲得時代において、日本の商習慣も徐々に変化を迎える時期にきている。

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【会社概要】ストラテジテック・デシジョン・イニシアティブ(SDI)

中国インド東南アジアを中心とした新興国市場のリサーチとマーケティングに特化している。

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